8月24日、学び方の違う子の親の会ルピナスとカラフルバード主催イベント『多様な学びを探しに行こう!』を開催しました。今回のテーマは「学びが開く未来」。
当事者のリアルな声と、現場の先生による実践紹介を通して、「見えにくい困りごと」にどう寄り添うかを考える、濃密な3時間半となりました。
🗣️前半:大学生になった当事者と井上先生の歩み
前半は、今年4月に大学生になった叶夢さんと、小学5年生から伴走してきた井上先生の対談。インタビュー形式で、成長の軌跡や当時の気持ちを振り返る貴重な時間となりました。
井上先生はこう語ります:
> 「勉強はできていた。でも癇癪を起こしていた。テストの点数に問題がないからと、担任の先生には取り合ってもらえなかった。」
癇癪の背景にある困りごとに気づくのは難しく、支援の必要性が見えづらかったといいます。
叶夢さん自身も、最近になってようやく気づいたことがあるそうです:
- 「自分の問題ではなかった」
- 「支援が必要だった」
- 「他に選択肢があることを知らなかった」
高校の入試の時の「テストの問題用紙・解答用紙の白が眩しかった」という一言からも、私たちには想像できない“困りごとの世界”があることを実感しました。一方、当事者は自分の当たり前は、他のひとも同じだと考えてしまいます。そして、自分の困っていることを言語化できない状態では「大丈夫」としか答えられない現実。その言語化できない状況を周りの支援者(親や先生)が気づいてあげることの重要性も感じました。
現在、叶夢さんは、ノイズキャンセリングイヤフォンや青・緑のカラーレンズのメガネを使うことで、音や光による感覚過敏によるイライラやエネルギー消耗が減り、快適に過ごせているとのこと。以前は夜9時には意識を失うように寝ていたのが、今では夜中まで活動できるようになったそうです。
また、現在使用しているICTを活用したスケジュール管理の工夫も紹介されました。忘れ物や予定のダブルブッキングが多かった過去から、大学では「予定を聞かれる側」へと変化。これまでは人に「聞いて確認する」方法を、スマートスピーカーで再現し、成功体験につなげたプロセスは、支援の可能性を広げるヒントになりました。
> 多様な学び方は、「普通」に近づけることではなく、その子の力を最大限に発揮できる環境づくりが大切。
環境が整ったことで癇癪でイライラを爆発させることなく「学び」に集中できるようになった叶夢さんは、遠回りしながらも、現在、大学生活をとても生き生きと楽しんでいるようでした。
🧑🏫後半:中学校の通級指導 伊藤先生の実践
後半は、中学校で通級指導を担当されている伊藤先生のお話。「趣味は通級指導、土日は教材づくり」と語るほど、支援を心から楽しんでいる先生です。
中学校では教科ごとに先生が変わるため、支援の交渉も複雑になります。担任だけでなく、学年主任や教頭など“キーパーソン”を見つけ、チームで支援体制をつくることの大切さを教えてくださいました。
合理的配慮の具体例も紹介されました:
- 手書きでは20点だったテストが、パソコン入力にすると70点に
- 読み上げ機能や拡大機能の活用で、理解度が大きく向上
こうした事実を各教科の先生に丁寧に伝えることで、他教科でも配慮が受けられるようになり、「お互いがwin-winになる関係づくり」が重要だと語られました。
通級指導は「成功体験を積む場」であることも強調されました。
たとえばタイピング練習では、ローマ字リストを全員に配布し、「不要な人は家で捨ててください」と伝えることで、困っている子が安心して受け取れる工夫がされていました。
また、ICTによる読み上げ機能の活用も印象的でした。
学校が準備してくれる読み上げ担当の先生に「もう一度読んでください」と頼むのは心理的にハードルが高いのですが、パソコンなら文章が理解できない時、自分のペースで何度でも聞ける。まさに、読み書きに困難がない生徒が自分のペースで読み返すことができるように自分のペースで確認できる環境により近くなります。
生徒にとって安心して学べ、成果を披露できる環境が整い、学校側も人的負担が減る。まさにwin-winの支援体制です。
このような、具体的な事例による気付きが適切な合理的配慮に繋がるのだと感じました。
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💡 印象に残った言葉
- 「先生は敵ではない」
- 「支援がないことで、教育機会や情報アクセスが失われる」
- 「本人の困難をどう引き出すか。そして、困難の内容が分かったときに、一緒に調べ、試し、一緒に考えることを当事者に伝えることが大事」
井上先生と伊藤先生の対談では、先生が合理的配慮の対応を拒否したり対応しない背景には「子どもの将来を心配しているからこそ」という想いがあることも語られました。
とはいえ、その心配が当事者の将来に本当に良いとは限らず、支援につながらないこともあります。そのようなときは、事例を集めて学校側と共有し、知識や理解を深めながら進むことが大切だと教えていただきました。
🕒 3時間半の濃密な時間
当事者のリアルな声、先生方の実践、学校との交渉のヒントなど、あっという間の3時間半でした。
「多様な学び」だけでなく、その克服法や交渉の工夫、「見えない困りごと」にどう寄り添うかを考える、深く温かい時間となりました。
井上先生、松本叶夢さん、伊藤先生、ありがとうございました!
⭐️9月30日まで、上記のセミナーをオンデマンドで配信中です⭐️
全部お聞きになりたい方は以下のURLからお申し込みください。
【オンデマンド配信】多様な学びを探しに行こう!inえどがわ - https://peatix.com/event/4555216
教材や資料の展示がありました
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